日本臨床皮膚科医会
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皮膚の病気

さまざまなひふの病気について、症状などをわかりやすく解説しています

水疱性類天疱瘡(すいほうせいるいてんぽうそう)

 全身の皮膚に水疱(水ぶくれ)を作る,高齢者に多い病気です.近年の高齢化により,患者さんが増えてきています.最初は,かゆみを伴い少し盛り上がる赤い発疹(紅斑)があらわれ,次第に増えてその一部が水疱になってきます.水疱は次第に破れて傷になり,中の液体(滲出液)が服やガーゼに張り付いて生活に支障をきたすようになります.一部の患者さんでは,口の中にも水疱ができ,それが破れて痛くなってしまい,食事を摂ることが困難になってしまいます.生命に関わることもある病気で,一定以上の症状がある患者さんは申請することで難病に認定され,医療費の扶助を受けることが出来ます.

 この病気は主に,皮膚のかたちを維持するために必要な蛋白質である「17型コラーゲン」(BP180)が,自分自身の白血球によって攻撃されることで起こります.白血球は通常,体内へ侵入した細菌やウイルスなどの微生物を排除することが役目ですが,この病気の患者さんでは,なぜか自分自身の皮膚を攻撃してしまうのです.このようにして生じる病気を「自己免疫疾患」といい,水疱性類天疱瘡は最も患者さんの多い「自己免疫性水疱症」です.また最近,糖尿病の治療薬(DPP-4阻害薬)を飲んでいる患者さんの一部で,水疱性類天疱瘡を起こすこともわかってきました.

 この病気の治療は,主にステロイドと呼ばれる薬を内服(全身投与)することです.ステロイドは最も一般的に使われる,白血球のはたらきを抑える薬剤です.症状の程度や体重にもよりますが,1日6-12粒の内服から開始し,落ち着いたら慎重に量を減らしていきます.皮膚に対しては,清潔に洗浄したうえでステロイドの塗り薬などを使います.全身皮膚の処置やステロイドの副作用を確認するため,多くは入院が必要になります.しかし,完全に治癒することは現代の医学では困難であり,大部分の患者さんは1日1-2粒のステロイドを一生飲み続ける必要があります.ステロイド内服で効果が不十分な場合は,ステロイドの点滴や免疫抑制剤,免疫グロブリン大量静注療法,血漿交換などの追加治療が必要になることがあります.

(北海道支部 藤田 靖幸)


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