手足口病は口腔粘膜や手や足などの水疱性の発疹を主症状とした急性ウィルス感染症で、幼児を中心に夏に流行が見られます。その発疹は、主に手のひらと足の裏に痒みの無い小さな水疱や赤い斑点を生じますが、肘頭、膝蓋、臀部にも出現することがあります。口腔内では口腔粘膜や舌に手足と同じような水疱や小潰瘍(アフタ)がみられます。発疹は口の中の潰瘍だけの場合や皮膚の発疹だけのこともあり、通常は3〜7日の経過で消退し、水疱はかさぶたを作らずに治ります。発熱は約1/3に見られるとされますが、軽度で見過ごされることが多く、38度℃を超えることはほとんどありません。
手足口病の原因となるウィルスは一つではなく何種類かのウィルスが病原体となります。主な病因ウィルスはエンテロウィルスに属するコクサッキーA16(CA16),CA6,CA10,エンテロウィルス71(EV71)などですが、その他のエンテロウィルスによっても同様な症状を呈することがあります。2011年夏に流行した手足口病はこれまで日本では大きな流行をしたことのないCA6によるもので、水疱や紅斑が全身の広範囲に出現する皮膚症状の激しい非典型例も多くみられ、発病から1〜2ヵ月後に爪に横線を生じたり、爪が浮き上がり脱落する爪甲剥離(爪甲脱落症)を伴うこともありました。
流行と中心となるウィルスは年によって異なり、手足口病に一度かかったことがあっても、免疫の無いウィルスによる手足口病に再びかかることもあります。本症は4歳ぐらいまでの乳幼児を中心とした疾患で学童でも流行的発生がみられることありますが、学童シ以上の年齢層の大半はこれらのウィルスの感染(不顕性感染−ウィルスに感染しても症状が無い−も多い)をすでに受けているので成人での発症はあまり多くありません。 感染経路は咽頭から排泄されるウィルスによる飛沫感染、便中に排出されたウィルスが手などによって口や鼻の中に運ばれる経口感染、水疱内容物からの接触感染などがあります。潜伏期は3〜4日ですが、ウィルスは咽頭から1〜2週間、便からは3〜5週間排泄されますので、排泄物や患児のオムツに対する注意やトイレの後の手洗いとうがいが感染予防にとって大切です。
手足口症の大部分は発疹のみの軽い疾患で痒みを伴うこともまれであり、特別な治療は必要ありません。登校登園も本人の状態によって判断すればよいと考えられています。
(静岡県支部 杉浦 丹)
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