新聞の医療コーナーなどでも取り上げられることが多くなったメラノーマは、皮膚の悪性腫瘍の中でもっとも怖い腫瘍ともいわれています。
メラノーマは、皮膚などに分布してメラニン色素を産生する色素細胞(メラノサイト)ががん化したもので、「ほくろのがん」と表現されることもあります。いわゆるほくろからメラノーマが生ずるのかどうかについては未だ学説も分かれるところですが、ほとんどのほくろは悪性化しないというのが一般的な考え方です。しかし、「ほくろ」と考えていたものが、実はメラノーマの初期であったということも有り得ますので、心配なほくろは皮膚科を専門とする医師の診察を受けることをお勧めします。
メラノーマにも種々の病型がありますが、日本人に多いタイプは末端黒子型といわれる病型で、足の裏や手のひら、指趾に生ずるタイプです。
メラノーマは、先に述べたとおり色素細胞のがん化したものであり、まずメラニン色素が大量に産生されるため濃い黒色が特徴です(稀に色素を産生しないタイプもあります)。また拡大のスピードが速い、表面が崩れやすいため出血しやすいなどの症状もみられます。病気が進むと多くの内臓器に転移しますが、この際、腫瘍の細胞同志のつながりが弱いため転移しやすいことが、最初に述べたようにもっとも怖い悪性腫瘍といわれる所以です。
最近ではダーモスコープという簡単な検査器具で、切る前にある程度診断が付けられるようになったうえ、一部の施設ですが、センチネルリンパ節生検という手法も導入され、発症部位に最も近いリンパ節への転移の有無を確認して以後の治療を進めることもできるようになりました。
治療は病期(進行の度合い)によって異なります。初期であれば患部を大きめに切除するだけで済む場合もありますが、進行し、リンパ節や他臓器への転移がある場合は、抗がん剤が効きにくい腫瘍であるため厳しいといわざるを得ませんでした。しかし、近年生物学的製剤の一種や、がんの免疫力を活性化する作用を持つものなど、メラノーマに効果を有する薬剤が続々認可されてきていて期待が持たれています。
とはいえ、早期に発見して治療することが大切なことに変わりはありません。素人判断をせずに、皮膚科を専門とする医師の診察を早めに受けることが大切です。
(神奈川県支部 鎌田 英明)
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