多形滲出性紅斑は丸くて隆起した紅い皮疹が、四肢に対称性に出現する皮膚病です。皮膚の狭い範囲に病変が出現する軽症型と、広範囲の皮膚、粘膜、眼、内蔵に病変が及ぶ重症型があります。軽症型は稀な病気ではありません。
一つ一つの皮疹は周辺が盛り上がり、中心がへこみ、射撃の標的や眼の虹彩のような丸い形になります(写真)。水疱になることもあります。顔、肘、膝、手のひら、足の裏に対称性に出現します。重症の場合は眼が赤くなったり、唇や口内、陰部がただれたりなどの粘膜症状が現れます。
重症型は発熱、関節痛、倦怠感などの全身症状が現れます。眼の結膜に病変が及ぶと、結膜の癒着が生じて視力障害を引き起こします。最も重症になると身体の広範囲の皮膚が水疱になったり、水疱が破れてびらんになったりします。このような場合は生命に危険が及びます。
多形滲出性紅斑の原因は様々です。ウイルス、細菌、真菌などの微生物や薬剤に対する免疫反応が原因になります。ウイルスでは単純ヘルペス発症のあとに出現することがよくあります。細菌ではマイコプラズマ感染のあとによく出現します。原因が不明の場合も多くあります。原因がはっきりわからない多形滲出性紅斑は、春から夏にかけて、若い女性によく発症します。
多形滲出性紅斑は皮膚症状に特徴があるため、目で見るだけで多くの場合は診断できます。他の病気と区別するために皮膚の一部を切り取って病理組織検査を行うことがあります。肝臓などの内蔵の障害が現れているかどうかを調べるために血液検査を行います。マイコプラズマ肺炎が疑われるときは、胸部X-線検査、血液中の抗マイコプラズマ抗体検査を行います。
軽症型と重症型では治療法やその後の経過が大きく異なります。軽症の場合は皮膚の赤いところにはステロイド軟膏を塗ります。痒みに対しては抗ヒスタミン薬を内服します。軽症型はそのまま1-2週間で治ります。重症型はステロイド薬を内服あるいは点滴投与します。また、輸液による循環管理が必要になります。
(北海道支部 嵯峨 賢次)
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