掌蹠膿疱症とはその名の通り、手のひら(手掌)、足の裏(足蹠)にうみを持った小さな水ぶくれ(膿疱)が次々とできる慢性の皮膚疾患です。手のひらや土踏まず、かかとなどに赤みができ、次に膿疱ができ、しばらくすると茶色っぽいかさぶたになり、皮がむけますが、また新しい膿疱が別の場所にできるということを繰り返します。ひどくなると、手のひらや足の裏全体の皮膚が赤みを帯び厚くなり、うす皮がむけひび割れし、痛みを伴います。また、膝や肘などに赤みができたり(掌蹠外皮疹)、爪が変形することもあります。ただ、この膿疱は一種のアレルギー反応によって白血球が集まったと考えられ、細菌は無く、体の他の部位や他人にうつったりすることはありません。
次に掌蹠膿疱症の原因ですが、以前より、扁桃腺炎や虫歯、歯周囲炎などの感染病巣と密接に関連していることが知られており、扁桃摘出や歯科治療により劇的に皮疹がよくなる例がしばしばあります。また喫煙(約8割が喫煙者)や歯科金属のアレルギーの関与も指摘されており、禁煙や歯科金属除去が効果のある場合もあります。しかし、実際はこれらの原因が見つからないことも多く、この場合は症状を抑える治療となります。主に副腎皮質ホルモン軟膏や活性型ビタミンD3軟膏の塗り薬で赤みや膿疱を抑えますが、治りにくい例では、PUVA 、ナローバンドUVB、エキシマライトなどの光線療法や、抗生物質、エトレチネート(ビタミンA誘導体)、ビオチン(ビタミンH)などの飲み薬を、症状に合わせ、組み合わせて治療します。このように治療していくと、症状の増悪はありますが、通常は、平均3〜5年ぐらいでよくなってきます。
また、この病気の約1〜3割に、関節症状がみられます。特に前胸部が痛みを伴い腫れることがしばしばあり(胸肋鎖骨間骨化症)、さらに広い範囲に肩や首、腰が痛くなることもあります。この痛みは激しいこともあり、リウマチ科や整形外科の医師と連携して治療します。
私たち皮膚科医にとって、掌蹠膿疱症は、手こずる病気ではありますが、決して治らない病気ではありません。あきらめずに治療することが大切です。
(徳島県支部 宇都宮 正裕)
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